所有者不明土地問題の解決に向けた改正登記制度の概要と影響
はじめに
日本には、所有者が不明な土地、いわゆる「所有者不明土地」が増加しており、その面積は、九州よりも広く、国土の約22%(※1)に上ります。
所有者不明土地は、主に相続登記がされずに放置された土地が原因で発生します。相続登記とは、不動産の所有権が誰に移ったのかを公的に示すための手続きです。相続登記がされていないと、土地の所有権が誰にあるのかが不明になり、さまざまな問題を引き起こします。
例えば、公共事業や開発事業の際に、所有者不明土地が立ちはだかることで、事業の遅延や中止につながることがあります。
※1 出典:政府広報オンライン「なくそう、所有者不明土地! 所有者不明土地の解消に向けて、 不動産に関するルールが大きく変わります!」https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202203/2.html
改正された不動産登記制度の概要
所有者不明土地問題の解決に向け、総合的に民事基本法制の見直しが行われました。改正された制度の主な内容は、以下のとおりです。
- 相続登記の義務化(令和6年(2024年)4月1日施行)
相続人が不動産を取得した場合、3年以内に登記申請をすることが義務付けられました。
- 「相続人申告登記」制度の創設(令和6年(2024年)4月1日施行)
今までは相続登記をするには、全ての相続人の同意が必要とされていました。そのため、相続人同士で話し合いがまとまらないと、相続登記をすることができないという事態に陥ります。
そこで、相続登記を申請する代わりに、自分が相続人であることを法務局に申し出ることで、相続登記の申請義務を果たすことができる「相続人申告登記」という制度が創設されました。
相続人申告登記をするには、自分が相続人であることを証明する戸籍謄本などの書類を法務局に提出します。 この制度を利用すれば、相続登記と比べて手続きが簡易で、費用もかかりません。
違反時の過料
相続登記の義務化に違反した場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
注意点と今後の対策
改正された不動産登記制度には、以下のような注意点があります。
- 期限の厳守
相続登記の申請は、相続開始を知った日から、もしくは、遺産分割協議が行われた場合は、遺産分割が成立した日から、3年以内に行う必要があります。期限を過ぎると、過料が科される可能性があります。
- 必要な書類の準備
相続登記の申請には、さまざまな書類の準備が必要です。必要書類については、法務局のホームページなどで確認しておきましょう。
- 法務局や専門家に相談することの重要性
相続登記の手続きは、複雑で難しい場合があります。法務局や専門家に相談することで、スムーズに手続きを進めることができます。
まとめ
改正された不動産登記制度は、所有者不明土地問題の解決に向けた重要な一歩です。相続登記の義務化や「相続人申告登記」制度の創設により、所有者不明土地の減少が期待されています。
相続人となった方は、改正された不動産登記制度の概要と注意点を理解し、期限内に相続登記の申請を行うようにしましょう。
こぼれ話
図表:相続問題の相談先
相続登記の義務化・遺産分割等に関する認知度等調査において、「今後、自分が相続手続全般をする場合の相談先について」アンケートが実施されました。
「 親族・知り合い 」 と答えた人が36.8%と最も多いのですが、「 自治体 」32.8% 「 司法書士 」同32.8%に続き、おかげさまで 30.1%の方から私ども「 弁護士・税理士・公認会計士 」を挙げていただきました。
もちろん、当事務所も相続登記を含めた相続手続き全般に関してのご相談を受け付けております。ご不明な点、ご不安な点などございましたら、お気軽に初回無料相談をご予約ください。
著者情報
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「税理士業はサービス業」 をモットーに、日々サービスの向上に精力的に取り組む。
趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。
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