【相続対策】節税だけでない、事前に必要な4つの対策

公開日 2019年7月23日 最終更新日 2019年10月27日

最終更新日:2019/07/23

 

相続対策

こんにちは、名古屋相続税無料診断センターで税理士の佐治です。

 

お客様から「相続対策をしたい」といわれて話を聞くと、たいていは節税したいという内容です。

もちろん節税をして相続税の支払いを少しでも抑えたいという気持ちはとってもわかります。

 

でも相続対策としてやっておくべきことは節税対策以外にも分割対策、納税対策、二次相続対策の4つがあります。

 

どの対策を行うか、どの対策から始めるかというのはケースによって違うので個別に検討する必要あります。

 

分割対策、納税対策などを行うと、結果として節税対策につながることもあります。

 

ただ共通するのは、どの対策も早く始めるに越したことはありません。

 

対策するタイミングが遅れると、本来できたはずの対策ができず、 将来の相続税の納税額が大きくなることがあります。

 

 

この記事では相続税専門の税理士が、

 

 

節税対策とそれ以外に重要な相続対策について解説します。

 

もくじ

1. 相続の節税対策の代表格

 1-1.年間110万円の非課税枠をつかった生前贈与      

 1-2.生命保険の非課税枠を活用

 1-3.配偶者への非課税枠を活用した生前贈与

 1-4.養子縁組を活用した節税対策

 1-5.小規模宅地等の特例を活用した節税対策

 1-6.不動産を活用して相続対策

 1-7.会社を設立して節税

2. 相続の納税対策

 2-1.生命保険を活用して納税対策

 2-2.収益不動産を活用して納税対策

3. 将来をみすえた二次相続対策

 3-1.二次相続とは

 3-2.二次相続対策が必要なわけ

 3-3.二次相続対策の具体

4.相続の分割対策

5.まとめ

 

 

 

1.相続の節税対策の代表格

 

1-1.年間110万円の非課税枠をつかった生前贈与

 

贈与税は1月1日から12月31日までの間に贈与を受けた金額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの金額に対して課税されます。

 

これを「暦年課税制度」と言います。

 

 

1年間に取得した財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかからず、申告不要です。

 

 

110万円の基礎控除は財産をもらった人ごとに認められます。

 

 

【ケース】

 

 

1年間に父から100万円、母から50万円の贈与を受けた場合

 

(100万円+50万円)=200万円

 

 

200万円-110万円(基礎控除)=90万円

 

 

基礎控除を超えた90万円が贈与税の対象となります。

 

 

【ケース】

 

 

1年間に父から50万円、母から50万円の贈与を受けた場合

 

(50万円+50万円)=100万円

 

100万円<110万円(基礎控除)

 

基礎控除以下なので贈与税はかかりません。

 

 

 

このように暦年贈与を使って、例えば3人の子へ毎年110万円ずつ10年間贈与した場合、計3,300万円の財産を無税で贈与できます。

 

 

ただし、毎年同じ金額の贈与を続けると、最初からまとまった金額を贈与するつもりだったのでは?」と税務署から指摘を受け、贈与税がかかる可能性があるので注意が必要です。

 

 

 

1-2.生命保険の非課税枠を活用

 

 

生命保険の死亡保険金はみなし相続財産として相続税の対象になりますが、遺族の生活を守るためという点から、一定の非課税枠が設けられています。

 

 

非課税額は次のように計算します。

 

 

生命保険の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数

 

 

つまり、亡くなった人から現金で相続する場合には、その金額が相続税の課税対象となりますが、生命保険金で受け取った場合、一定の額を控除することができます。

 

 

そうすると課税対象金額が減少し、納める相続税額が少なくなります。

 

 

【ケース】

 

 

亡くなった人 : 夫

 

 

相続人 : 妻と子ども2人の計3人

 

 

この場合生命保険の非課税枠は

 

 

500万円 × 3人 = 1,500万円

 

 

となります。

 

 

たとえ、相続人の1人だけが死亡保険金を受け取った場合でも、1,500万円の控除を受けることができます。

 

 

ここで注意したいのが、

 

 

生命保険は誰が保険料を負担して、誰が保険金を受け取るかで課税される税の種類が違ってきます。

 

 

この例は、保険料を負担していたのが「亡くなった人」で、保険金を受け取ったのが「相続人」なので、死亡保険金として生命保険の非課税枠が受けられます。

 

 

もし、上記以外の保険料負担者や受取人の場合で相続財産になるかどうか不安な人は、相続の専門家へ聞いてみることをおすすめします。

 

 

 

1-3.配偶者への非課税枠を活用した生前贈与

 

 

結婚して20年以上経つ配偶者へ住宅や住宅を取得するための贈与は、贈与税の計算で最大2,000万円控除することができます。

 

 

贈与税にはもともと110万円の非課税枠があるので、合計すると2,110万円まで無税で贈与することができます。

 

 

この特例を受けるためには次の条件をすべて満たす必要があります。

 

 

1.夫婦の婚姻期間が20年以上であること

 

 

2.贈与を受ける人が住む住宅や住宅を取得するための資金の贈与であること

 

3.贈与を受けた人が、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、贈与で取得した住宅に住むか、住む見込みがあること

 

 

またこの特例は、同じ夫婦間で一生に一度しか使うことができません。

 

 

行き当たりばったりで贈与すると損をしてしまう可能性があるので、贈与をするかどうかは相続や贈与専門の税理士へ相談することをおすすめします。

 

 

 

1-4.養子縁組を活用した節税対策

 

 

 

 

養子縁組をすると法定相続人がその分増えるので、いろいろなメリットがあります。

 

 

ただし、相続税法上養子とできるのは

 

 

実の子いる場合  1人まで

 

 

実の子がいない場合  2人まで

 

 

1.相続税の基礎控除額が増える

 

 

相続税の基礎控除額は次の算式で求めます。

 

 

相続税の基礎控除 = 3,000万円 + 法定相続人 × 600 万円

 

 

なので、養子が1人増えると、基礎控除額が600万円増えます。

 

 

 

2.生命保険の非課税枠が増える

 

 

1-2で説明しましたが、生命保険の非課税枠は

 

 

生命保険の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人

 

 

なので、養子が1人増えると、非課税枠が500万円増えます。

 

 

 

3.相続税の税率が下がる

 

 

相続人が増えると、相続人1人当たりが取得する財産の額が少なくなります。

 

 

相続税は財産が増えれば増えるほど税率が高くなる仕組みです。

 

 

いいかえると、相続人の数が多ければ多いほど1人当たりの取得する財産の額が少なくなり、税金が安くなります。

 

 

 

1-5.小規模宅地等の特例を活用した節税対策

 

 

小規模宅地等の特例とは、いろんな要件があるのですが、一番ベタなものは、次の条件を満たした場合、一定の面積まで土地の評価額を減額できるという制度です。

 

 

1.亡くなった人や亡くなった人と同じ生計を営んでいた親族の事業用や居住用の宅地など

 

2.建物の敷地になっているもの

 

 

要件を満たすと土地の通常の評価額の50~80%減額できるので、非常に節税効果が高くなります。

 

 

 

1-6.不動産を活用して相続対策

 

 

不動産を活用した相続対策という言葉は聞いたことのある人もたくさんいると思います。

 

 

たとえば、更地がある人は、そこにアパートを建設してアパマン経営をすると、その土地や建物を通常の評価額からさらに減額できる制度です。

 

 

例えば貸家なら通常の相続税評価額からさらに30%減額ができ、

 

 

土地なら通常の相続税評価額から15%は減額可能です。

 

 

他にも土地だけを貸している場合などいろんなケースがあるので、不安な人は相続の専門家へ相談することをおすすめします。

 

 

 

1-7.会社を設立して節税

 

 

日本の相続では土地や建物の不動産を相続するケースが圧倒的に多いです。

 

そこで、不動産をたくさん所有している場合、その不動産法人へ移転して運営するめの会社を設立して、相続対策をすることができます。

 

 

この方法は、もともと個人が受け取っていた家賃収入を法人が受け取り、それを役員や従業員へ給与として分散させて、1人へ所得が集中するのを回避する方法です。

 

 

 

【所得税の節税スキーム】

 

 

1.法人を設立する

 

 

2.個人が所有する賃貸用不動産(なるべく建物だけ)をその法人へ売却する

 

 

3.法人が受け取った家賃収入を、家族へ役員報酬や給与として支払う

 

 

これらのことを行うことで、これまで特定の人へ集中していた所得を分散することができ、その結果毎年の所得税も大幅に安くなります。

 

 

不動産所有会社を作るときのポイント

 

1. 出資者(株主は)子や孫にする

 

 

2.土地は金額が高いので建物のみ法人へ売却する

 

 

 

2.相続の納税対策

 

 

2-1.生命保険を活用して納税対策

 

 

相続が発生すると、亡くなった人の金融機関にある預貯金は相続財産として遺産分割の対象となり、引き出し額に制限がかかります。

 

 

さらに、預金を引き出すために戸籍謄本や相続人の印鑑証明書などさまざまな書類が必要となります。

 

 

一方、生命保険の死亡保険金は、受取人が請求の手続きをすれば、5から10営業日で受取人が指定する口座へ振込みされます。

 

 

納税資金や葬儀代の支払いのために現金が必要になった場合でもすぐに資金を準備することができます。

 

 

さらに生命保険は1-2でもご紹介したように、節税対策としても大変役に立ちます。

 

 

 

2-2.収益不動産を活用して納税対策

 

 

更地を保有している場合、生前に貸付用不動産を購入する方法があります。

 

 

毎月の家賃収入を得られるようにしておくと納税資金を確保しやすくなります。

 

 

また、1-6で解説しましたが、土地を他人に貸して、その人が自宅を建て住んでいる場合「貸宅地」として、土地の評価額を下げることができ、相続税の節税対策としても有効です。

 

 

 

3.将来をみすえた二次相続対策

 

 

3-1.二次相続とは

 

 

二次相続とは、1度目の相続が終わるかまたは終わったと仮定して、2回目の相続に備えて対策をすることをいいます。

 

 

例えば、夫が亡くなり、妻と子どもが相続人となった場合、残された妻に相続が発生した場合を想定して、夫の財産の分割方法などを考えます。

 

 

夫婦間では、比較的近い期間に立て続けに相続が発生することが多いため、二次相続対策が重要になってきます。

 

 

 

3-2.二次相続が必要なわけ

 

 

二次相続が起こるとどのような問題が発生するか具体例をもとに解説します。

 

【ケース】

 

 

亡くなった人 : 夫

 

 

相続人 : 妻と子ども2人の計3人

 

 

相続財産 : 預金 1億円

 

 

妻が持っている財産 : 預金 5千万円

 

 

 

1. 夫の相続時に法定相続どおり財産を分けた場合

 

 

(一次相続)

 

 

夫財産 : 1億円

 

 

妻 : 子 : 子 = 5,000万円 : 2,500万円 : 2,500万円

 

 

(二次相続)

 

 

妻財産 : 1億円

 

 

子2人が5,000万円ずつ相続

 

 

夫の亡くなった場合の相続税は、

 

 

基礎控除額が

 

 

3,000万円 + 600万円×3人 = 4,800万円

 

 

このときの相続税は

 

 

妻 0円(配偶者税額軽減によりゼロ)

 

 

子 145万円

 

 

子 145万円

 

 

となります。

 

 

次に妻が亡くなった場合の相続税は

 

 

遺産総額は

 

 

5,000万円 + 5,000万円 = 1億円

 

 

遺産に係る基礎控除が 

 

 

3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円

 

 

このときの相続税は

 

子 385万円

 

 

子 385万円

 

 

となります。

 

 

この場合の一次相続と二次相続を合わせた相続税額の合計は

 

 

145万円 + 145万円 + 385万円 + 385万円

 

 

=1,060万円

 

 

になります。

 

 

2. 夫の相続時に妻3,000万円、子7,000万円ずつ分けた場合

 

 

(一次相続)

 

 

夫財産 : 1億円

 

 

妻 : 子 : 子 = 3,000万円 : 3,500万円 : 3,500万円

 

 

(二次相続)

 

 

妻財産 : 8,000万円

 

 

子2人が4,000万円ずつ相続

 

 

夫の亡くなった場合の相続税は、

 

 

基礎控除額が

 

3,000万円 + 600万円×3人 = 4,800万円

 

 

このときの相続税は

 

妻 0円(配偶者税額軽減によりゼロ)

 

 

子 203万円

 

 

子 203万円

 

 

となります。

 

 

次に妻が亡くなった場合の相続税は

 

 

基礎控除が 

 

 

3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円

 

 

このときの相続税は

 

 

子 235万円

 

 

子 235万円

 

 

となります。

 

 

この場合の一次相続と二次相続を合わせた相続税額の合計は

 

 

1, 876万円

 

 

になります。

 

 

このように、一次相続のときの財産の取得額を変えると、一次相続と二次相続を合わせた合計額が184万円も安くなります。

 

 

今回のケースのように妻がもともと持っていた財産がたくさんある場合、一次相続で妻がたくさん財産を取得すると、一次相続と二次相続のトータルで見た場合、相続税が多くなってしまいます。

 

 

 

3-3.二次相続対策の具体例

 

 

1. 取得する財産の額で調整する

 

 

2. 取得する財産の種類を工夫する

 

 

3. 取得した財産の種類を変える

 

 

このような方法で二次相続対策を行うことが可能です。

 

 

 

4. 相続の分割対策

 

 

相続で何よりも大事なことは円満に相続を終えることと言われています。

 

 

これは相続した財産を争うことなく分割することが重要です。

 

 

遺産分割争いを避けるためには、遺言書を作成することが有効です。

 

 

遺産争いは富裕層だけの問題ではなく、例えばわずかの預金とマイホームしかないというような一般家庭でも十分起こりえます。

 

 

もしあなたがたくさん財産をもっていなくてもマイホームを持っているのなら遺言書をぜひ作成することをおすすめします。

 

相続対策

 

5.まとめ

 

相続の代表的な対策を解説しました

 

 

相続対策には、「節税対策」、「納税対策」、「二次相続対策」、「分割対策」の

4つがあります。

 

 

生前に少しでも相続対策を行えば、相続人の納税負担が軽減でき、少しでも多くの財産を相続人へ残すことができます。

 

 

相続人があなたのことを本当に想ってくれるのは、相続が起こって、円満に相続が終わったときかもしれません。

 

 

すこしでも早く相続対策をとっておきたいと思った人は、相続税専門の税理士である名古屋相続税無料診断センターへ相談することをおすすめします。

著者情報

佐治 英樹(さじ ひでき)
佐治 英樹(さじ ひでき)税理士(名古屋税理士会 登録番号_113665), 行政書士(愛知県行政書士会 登録番号_11191178), 宅地建物取引士(愛知県知事), AFP(日本FP協会)
「税理士業はサービス業」 をモットーに、日々サービスの向上に精力的に取り組む。
趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。

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