相続税の税務調査は「実地調査」だけじゃない?増える“電話・手紙”と、無申告への厳しい視線【令和6事務年度】
相続税のニュースを見ると「税務調査が強化された」「富裕層への監視が厳しい」といった話題が目立ちます。もちろんそれも事実ですが、国税庁が公表した最新データ(令和6事務年度・令和6年分)を読み解くと、もう少し具体的な“構造の変化”が見えてきます。
私たちが注目すべきポイントは、次の3点です。
- 税務署のチェックが「実地調査」と「簡易な接触」の二段構えになっている
- 自宅に来る調査だけでなく、電話や手紙による是正(簡易な接触)が過去最高レベルに増えている
- 無申告(申告していない人)に対しては、件数を絞ってでも高額な案件を狙いに行っている気配がある
「うちは関係ない」と思っていても、ある日突然、税務署から手紙が届く――。そんなケースが決して珍しくない状況になっています。この記事では、名古屋相続税無料診断センターの視点で、公表データから読み取れる「税務署の今の動き」を解説します。
1. 税務署の「二段構え」:実地調査と簡易な接触とは?
相続税の“税務調査”というと、ドラマのように段ボールを持った調査官が自宅に来て、預金通帳や金庫を調べる「実地調査」をイメージする方が多いと思います。
しかし現在、国税庁は実地調査だけでなく、文書・電話・来署依頼による面接などで申告漏れや計算ミスを直させる「簡易な接触」にも力を入れています。資料の中でも、簡易な接触を「効果的・効率的に活用する」と明記しており、現場の運用は明らかに“重い調査(実地)”と“軽い是正(簡易接触)”を組み合わせるスタイルにシフトしています。
次章では、その「簡易な接触」がどれほど増えているのか、具体的な数字で確認します。
2. “電話・手紙”が増えている:簡易な接触は過去最高水準へ
実際に数字を見てみましょう。令和6事務年度における「簡易な接触」の実績は以下の通りです。
- 接触件数:21,969件(前年比117.0%)
- 申告漏れ課税価格:1,123億円(前年比117.8%)
- 追徴税額合計:138億円(前年比113.0%)
これらは、簡易な接触の公表を始めた平成28事務年度以降で最高の数字です。「とりあえず電話や手紙で確認してみよう」というアプローチが、全国規模で大量に行われていることがわかります。
ここで押さえておきたいのは、「税務署のアクションは実地調査だけではない」という点です。次章では、実地調査の増加にも触れつつ、とくに無申告に対する“狙い方”に見える変化を見ていきます。
3. 実地調査も増えているが、無申告への狙い方が変わった?
もちろん、本格的な「実地調査」が減ったわけではありません。令和6事務年度の実地調査は9,512件(前年比111.2%)、追徴税額は824億円(前年比112.2%)と、こちらも増加しています。
しかし、興味深い動きをしているのが「無申告(そもそも申告していない人)」に対する調査です。
無申告は「件数が減って、単価が上がる」=高額狙いの可能性
無申告事案に対する実地調査のデータを見ると、不思議な現象が起きています。
- 実地調査件数:650件(前年より減少)
- 追徴税額合計:142億円(前年より増加)
- 1件当たり追徴税額:2,187万円(前年比122.4%)
調査する件数は減らしているのに、取れている税金は増えている。そして1件当たりの追徴額が跳ね上がっている。ここから読み取れるのは、「手当たり次第に調査するのではなく、高額な無申告案件に狙いを定めて(ピンポイントで)調査に入っている」という可能性です。
次章では、そもそも「どの財産が申告漏れとして指摘されやすいのか」を確認し、読者の方が自分ごととして点検しやすい観点に落とし込みます。
4. 申告漏れで多いのは「現金・預貯金」と「その他」
では、実際にどのような財産が申告漏れとして指摘されているのでしょうか。金額の構成比を見ると、土地や建物よりも金融資産や見えにくい資産が多いことがわかります。
- その他:43.3%(生命保険金、退職手当金、貸付金など)
- 現金・預貯金等:29.1%
- 有価証券:13.6%
- 土地:12.3%
- 家屋:1.7%
「現金・預貯金等」と「その他」だけで全体の7割以上を占めています。名古屋の相続現場でも、「土地の評価」はもちろんですが、最終的に税務署と揉めたり説明に苦労したりするのは、家族名義の預金や手元現金の管理、貸付金などの見えにくい権利であるケースが非常に多いです。
ここまでで「税務署がどこを見ているか」の輪郭が見えてきました。最後に、こうした動きの背景として見逃せない“デジタル化”の進展(e-Tax利用率)を確認します。
5. e-Tax利用率が50%超え:デジタル化で「照合」が進む
令和6年度の相続税申告におけるe-Tax利用率は50.3%となり、ついに半数を超えました。国税庁は今後も利用拡大を進めており、利用者識別番号の確認簡素化など、手続きのハードルを下げています。
これが何を意味するかというと、単に「手続きが便利になる」だけではありません。申告データがデジタル化されればされるほど、税務署側のシステムでの照合(突合)や、調査対象の選別(ターゲティング)がより精緻に、スピーディに行われるようになります。
先ほど触れた「簡易な接触」や「無申告へのピンポイント調査」が増えている背景には、こうしたデジタル化による情報把握力の向上があると考えられます。
まとめ:名古屋の相続でも「二段構え」を前提に対策を
今回のデータを整理すると、税務署の動きは以下のようにまとめられます。
- 「実地調査」と「簡易な接触」の二段構えで、広くチェックを入れている。
- 簡易な接触(電話・手紙)は過去最高レベルに増えている。
- 無申告は、高額な案件ほど狙い撃ちされる傾向が強まっている。
- 申告漏れは「現金・預貯金」「その他」の財産で見つかりやすい。
「とりあえず出しておけばいい」「現金ならバレないだろう」という考えは、今の税務署のデータ分析力と運用体制の前では通用しにくくなっています。不安な点がある場合は、早めに専門家へ相談し、説明のつく状態で申告を行うことが最大の対策です。
令和5年度(愛知県・名古屋国税局管内の数字を含む)の動向や、簡易な接触が増え始めた背景については、以下の記事でも詳しく解説しています。
FAQ:相続税の「調査・接触」に関するよくある質問
Q1. 税務署から電話や手紙が来ました。これって税務調査ですか?
状況によりますが、国税庁が言う「簡易な接触」である可能性があります。これは申告内容に見直しや確認が必要な場合に行われるもので、必ずしも実地調査(職員の来訪)に発展するとは限りませんが、放置せずに適切な対応が必要です。
Q2. 「無申告」はどうやってバレるのですか?
税務署は、過去の所得データ、不動産の登記情報、保険金の支払調書、さらには国外財産調書など、あらゆる情報をシステムで照合しています。特に最近はデータ分析の精度が上がっており、「バレないだろう」は通用しにくくなっています。
Q3. どのような財産が申告漏れになりやすいですか?
統計上は「現金・預貯金等」と「その他(貸付金や未収金など)」が多くを占めます。自分では財産だと思っていなかったものが、実は課税対象だったというケースも多々あります。
税務署からの連絡が不安な方へ まずは来所相談のご予約から
「電話や手紙が届いたらどうしよう」「自分の申告内容で大丈夫か不安」「現金や家族名義預金の扱いが心配」など、相続税は“気になり始めた段階”で一度整理しておくほど、後の負担を減らしやすくなります。名古屋相続税無料診断センターでは、公表データや制度の動きも踏まえつつ、ご家庭の状況に合わせて論点を整理し、今からできる準備を一緒に確認する初回1時間の無料相談(来所)を行っています。
なお、お電話では個別のご相談対応は行っておりません。お電話は来所予約の受付としてご利用ください。
お急ぎの方は 0120-339-719 (予約受付時間 平日9:00〜18:00)
参考文献
- 国税庁(令和7年12月)「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf
- 国税庁(令和7年12月)「令和6年分 相続税の申告事績の概要」https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf
免責事項
本記事に掲載された情報は、一般的な情報提供を目的とするものであり、特定の個別の事案に対する税務上・法律上のアドバイスではありません。具体的な税務上の判断や手続きについては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて行われた行為により生じたいかなる損害についても、当センターは一切の責任を負いません。
本記事は、AIを高度なリサーチおよび執筆のアシスタントとして活用し、作成されました。記事の内容については、監修者である税理士が全ての正確性を確認し、最終的な責任を負っています。
著者情報

- 税理士(名古屋税理士会 登録番号_113665), 行政書士(愛知県行政書士会 登録番号_11191178), 宅地建物取引士(愛知県知事), AFP(日本FP協会)
-
「税理士業はサービス業」 をモットーに、日々サービスの向上に精力的に取り組む。
趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。
お知らせの最新記事
- 引っ越しだけじゃない ペンリィが変えるかもしれない「死亡・相続手続き」のこれから
- 【10月4日(土) 名古屋】弁護士・司法書士・税理士による遺産相続・遺言・登記 無料相談会を開催いたします!
- 相談実績1,234件突破!【8/23(土)】相続・不動産のお悩み解決!無料相談会を昭和生涯学習センターで開催(オンライン相談も可)
- 【NHK報道】路線価上昇で相続税が突然発生?名古屋で今知るべき全知識
- 相談実績1,234件突破!【6/22(日)】相続・不動産のお悩み解決!無料相談会を名東生涯学習センターで開催(オンライン相談も可)
- 「おひとりさま」時代の老後と相続 ~“孤立”は他人事ではない? 今からできる安心への備え~
- 【業務提携のお知らせ】READYFOR株式会社と遺贈寄付領域で提携
コラムの最新記事
- 引っ越しだけじゃない ペンリィが変えるかもしれない「死亡・相続手続き」のこれから
- 見つからない不動産"を防ぐには?2026年開始の新制度「所有不動産記録証明制度」の賢い使い方と知っておべき限界
- 『配偶者に全部』は本当に安心? 名古屋で考える二次相続モデルケースと対応策
- 兄弟で揉めない「実家の空き家」相続ガイド|後悔しないための3つのステップ
- 「私の場合は使える?」名古屋市の空き家3000万円控除、対象か3分で診断【税理士監修】
- 【名古屋市版】空き家相続の放置コストを1分で簡単シミュレーション!税金が6倍になる『特定空家』指定前に税理士が教える3つの対策
- 【パーソナライズ相続手続きナビゲーター】あなただけの相続スケジュールを自動作成














