「スマホで遺言」はどこまで本当?厳格化の理由と、争いの論点が変わる未来

図解:スマホ遺言の「誤解」と「現実」。左側は「スマホだけで作成・送信して完了」という誤ったイメージにバツ印。右側は「確実さ最優先の厳格な制度」として、法務局への出頭・保管、本人の読み上げ・録画が必要な流れを説明。下部には、制度開始までは公正証書遺言などの既存の方法が推奨される旨を記載。
デジタル遺言(保管証書遺言)の制度イメージ。「家でスマホで完結」ではなく、法務局での厳格な手続きが必要になる見通しです。

この記事の要約デジタル遺言は「スマホで手軽に完結」ではなく、本人確認・読み上げ・法務局保管を軸にした「安全重視」の制度として検討が進んでいます。何が便利になり、逆にどんな手間が増えるのか。制度開始を待たずに今できる備えと合わせて、税理士が解説します。

「スマホでピッと遺言が作れるようになる」。ニュースを見て、そんな未来を想像した方も多いのではないでしょうか。

税理士の佐治英樹です。結論から言うと、現在検討されている「デジタル遺言(保管証書遺言)」は、「手軽さ」よりも「確実さ」を最優先した制度になろうとしています。

スマホやパソコンで文章を作れるようにはなりますが、その代わりに「本人が読み上げる」「法務局に預ける」といった、これまで以上に厳格な手続きがセットになります。「思っていたより手間がかかるな」と感じるかもしれませんが、それには相続の現場を守るための重要な理由があるのです。

本記事では、要綱案から見えてきた「デジタル遺言のリアル」と、制度を待つ間に私たちが準備できることについて、実務家の視点で整理します。

【結論】「スマホで作れる」=「スマホだけで完結」ではない

今回検討されている新しい遺言制度、最大の目玉は「スマホやパソコンで遺言の内容を作ってもOKになる」という点です。これまで「手書き(自筆)」が絶対だったことを思えば、大きな変化です。

しかし、ここで誤解してはいけないのが、「スマホで作って、そのまま送信して終わりではない」ということです。

注意

もし、誰かが勝手にスマホを操作して遺言を作ってしまったら?
もし、無理やり書かされたデータだったら?

そんなトラブルを防ぐために、「本当に本人が作ったこと」「本人の意思であること」を証明するための手続きが、非常に重視されています。

ここを正しく理解しておかないと、いざ制度が始まったときに「せっかくスマホで作ったのに無効になった」「家で保存していたら認められなかった」という落とし穴にはまりかねません。

いま議論がどこまで進んだか:要綱案で見える“リアル”

報道などでは「保管証書遺言(仮称)」という名前で呼ばれ始めています。これまでの議論を整理すると、次のような仕組みが有力です。

項目 新しい制度の方向性(案) ポイント
作る方法 スマホ・PC等でデータ作成
(または印刷)
「自筆」が必須でなくなる
預ける場所 法務局 自宅保管のデータは無効になる見込み
手続き 本人が全文を読み上げる 等 対面またはWEBで「本人の意思」を確認
ハンコ 押印は不要になる方向 形式ミスによる無効を減らす

この設計図から読み取れるのは、国が目指しているのが「デジタルで自由にする」ことではなく、「法務局という公的機関を間に入れることで、確実に通る遺言を増やす」ことだという点です。

なぜ厳格化するのか:手書き・ハンコの代わりにある“安全装置”

なぜ、ここまで厳格にするのでしょうか。それは、これまでの「自筆証書遺言」が持っていた安全装置が外れるからです。

今までは、「全文を手書きする」「ハンコを押す」こと自体が、偽造を防ぐ強力な鍵(ロック)になっていました。筆跡鑑定という手段も使えました。
しかし、デジタルで文字を打つようになれば、誰が打ったかわからなくなります。つまり、「手書き」という鍵がなくなる分、別の「審判」を配置する必要が出てきたのです。

NOTE:新しい「審判」の役割

  • 法務局での保管:紛失や、誰かに書き換えられるリスクをゼロにする。
  • 読み上げの録画・録音:本人の口から内容を語らせることで、「やらされているわけではない」ことを記録に残す。

「スマホで作れる」という便利さの裏には、「相続の現場で揉めさせない」という強い意志が込められているのです。

争いの論点はどう変わる?「形式ミス」から「プロセスの適正」へ

遺言をめぐるトラブルは、残念ながら完全にはなくなりません。ただ、デジタル化によって「揉め方」の種類が変わると予想されます。

これまでの揉め方

「この字は本当にお父さんの字か?」「ハンコが実印じゃない」「日付が書いていない」といった、形式や筆跡に関する争いが多くありました。

これからの揉め方(予想)

「法務局での手続き中に、誰かに誘導されていなかったか?」「読み上げている様子がおかしくないか(認知症の影響はないか)?」といった、手続きのプロセスや本人の判断能力に焦点が移る可能性があります。

制度が整えば、「日付の書き忘れで無効」のような単純ミスは減るでしょう。その代わりに、映像やログが残るからこそ、「その時の様子」がより細かくチェックされる時代が来ると考えられます。

「いつから使える?」は、もう少し先の話

「ニュースになったから、来年から使える」と思いたいところですが、実際にはもう少し時間がかかりそうです。

法律の改正案が国会を通ったあと、システムを作り、全国の法務局で運用ルールを徹底しなければなりません。特に今回は「オンラインでの本人確認」や「データの保管」という新しい仕組みが入るため、慎重に進められるはずです。

実務感覚としては、法律ができても、現場で安心して使えるようになるまでには数年の「助走期間」が必要になるでしょう。

では今どうする? “未来待ち”ではなく、確実性で選ぶ

デジタル遺言を待って、遺言作成を先延ばしにするのはおすすめしません。制度ができるまでの間に何かあっては、元も子もないからです。
今できる最善手は、ご自身の希望に合わせて「既存の確実な方法」を選ぶことです。

1. 争いを絶対に避けたい、確実性を最優先するなら

👉 「公正証書遺言」がやはり最強です。公証人というプロが作成に関与するため、安心感は段違いです。

2. 費用を抑えつつ、確実に残したいなら

👉 「自筆証書遺言」+「法務局保管制度」。現在すでに始まっている制度です。自分で手書きする必要はありますが、法務局で保管してもらえる安心感はデジタル遺言と同じです。

TIP:今日からできる「デジタル終活」

遺言とは別に、スマホのパスワードやネット銀行のIDなどを整理する「デジタル終活」は、制度を待たずに今日から始められます。むしろ、こちらのほうが残された家族にとっては切実な問題かもしれません。

相続だけが選択肢ではない:「遺贈」という意思表示

最後に、少し視野を広げてみましょう。遺言は「家族にどう分けるか」を決めるだけのツールではありません。
お世話になった団体に寄付をしたり、血縁のない人に財産を譲ったりする「遺贈(いぞう)」という選択肢も、遺言があれば実現できます。

デジタル化の流れは、形式をどうするかという議論ですが、一番大切なのは「誰に、何を、なぜ残したいか」という中身です。新しい制度を正しく恐れつつ、まずは「想い」の整理から始めてみてはいかがでしょうか。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. デジタル遺言(保管証書遺言)は、もう使えますか?

いいえ、まだ使えません。現時点では法制審議会での「要綱案」の段階です。今後、国会での法改正やシステムの整備が必要になるため、実際に利用できるようになるまでには、早くとも数年はかかると予想されます。

Q2. 家のパソコンで作って保存しておいたデータは、遺言として認められますか?

現在検討されている案では、認められない可能性が高いです。改ざんや紛失を防ぐため、「法務局にデータを預ける(保管する)」ことが有効化の条件になる見込みです。「作っただけ」では無効になる点に注意が必要です。

Q3. 今のうちに「自筆証書遺言」を書いたら、新しい制度が始まった時に無効になりますか?

いいえ、無効にはなりません。自筆証書遺言は現行法に基づく正当な遺言方式ですので、デジタル遺言の制度が始まっても有効性は変わりません。制度待ちをするよりも、今の確実な方法で作成しておくことをお勧めします。

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    免責事項

    本記事に掲載された情報は、2026年1月26日時点の法制審議会の要綱案および報道に基づく一般的な情報提供を目的とするものであり、将来的に制度内容が変更される可能性があります。具体的な税務上の判断や手続きについては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

    本記事は、AIを高度なリサーチおよび執筆のアシスタントとして活用し、作成されました。記事の内容については、監修者である税理士が全ての正確性を確認し、最終的な責任を負っています。

    著者情報

    佐治 英樹(さじ ひでき)
    佐治 英樹(さじ ひでき)税理士(名古屋税理士会 登録番号_113665), 行政書士(愛知県行政書士会 登録番号_11191178), 宅地建物取引士(愛知県知事), AFP(日本FP協会)
    「税理士業はサービス業」 をモットーに、日々サービスの向上に精力的に取り組む。
    趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。

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